今回は東京都北区にある王子駅周辺を散策します。王子という地名の由来となった王子神社や都内有数の滝である名主の滝などを散策しました。
王子駅は東京駅から京浜東北線で20分、片道170円です。
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名主の滝公園
王子散策で最初に向かった場所は名主の滝公園です。王子は武蔵野台地の突端にあるため滝が多く、「王子の七滝」と呼ばれるほど滝がありました。
しかし現存する滝はこの名主の滝のみとなり、23区内でも数少ない滝の一つとなりました。
男滝
名手の滝公園内にもいくつかの滝があり、男滝、女滝、独鈷の滝、湧玉の滝の4つになります。
現在は男滝のみが流れていますが、滝以外にも回遊式庭園となっている園内は見応えのある施設です。
園内の多くは石畳になっており、起伏の激しい場所もありますのでスニーカーなどの動きやすい服装がベスト。
寂れたプールの跡が
昭和初期には株式会社精養軒によって買収された名主の滝公園は、プールや食事処などが置かれました。
かつては賑わいを見せていたであろうプールの施設もガラスが割れていて非常にエモい感じになっています。
こちらは薬医門。しっかりとした作りで、こちらから行けば回遊式の池へすぐ行くことができます。
名主の滝の水が辿り着く先には池が設けられており、鴨も泳いでいます。
王子稲荷神社
次に向かったのは王子稲荷神社です。落語「王子の狐」の舞台になった神社で、関東稲荷総司として源頼義も崇敬したそう。
大晦日には関東中の稲荷神社から狐が集まって参詣したという逸話も残っている歴史ある神社です。
蒔絵師としても有名な柴田是真の「額面著色鬼女図」を所有していて、国の重要美術品と認定されています。毎年丑の日には公開もされています。
門の装飾も重厚で格天井や彫刻の精巧さが際立っています。
本殿へ向かう階段はかなり急。この辺りの地形が他にになっていることがわかります。
外拝殿には豪華な色彩で彩られていて、後方に内拝殿があります。どちらも1822年の江戸後期に建てられたもので、徳川家斉によって寄進されました。
社殿の脇からはさらに奥へと行けます。こちらには伏見稲荷神社のような並んだ鳥居や「おもかる石」のようなものもありました。
灯籠の設置年は天保10年。つまり1841年頃からここにあるということですね。
狐もマスク。
王子神社
続いては、王子という地名の由来にもなった王子神社。1322年、当時の領主であった豊島氏が紀州より王子大神を迎えたことが始まりです。
徳川時代になると、初代徳川家康は朱印地として二百石を寄進し「王子権現」として江戸の名所となります。
また八代徳川吉宗は紀州の出身であったことから、紀州ゆかりのこの王子神社を大変気に入っていたそうです。
600年残る大銀杏
王子神社には多くの巨木がある場所でしたが、戦災によってほとんどが焼失してしまいました。
かつては太田道灌が雨宿りした椎や勝海舟の修行地としても有名だったそうです。唯一戦禍を逃れて残った大銀杏は600年も前からこの地を見守っています。このため東京都の天然記念物としても認められています。
髪の神社?関神社
全国でも珍しい「髪の祖神」として祀られる関神社には、あの百人一首でも知られる蝉丸が御祭神となっています。
髪でお悩みの方はぜひこちらも参拝してください。
音無川と音無橋
王子神社のそばには音無川と呼ばれる川が流れています。実はこの川は石神井川なのですが、王子神社が紀州のゆかりであることから、そばを流れるこの川も紀州にある音無川からとってつけられました。
また川に架かる橋も音無橋と呼ばれ、音無親水公園の賑わいを見下ろすことができます。
あすかパークレールで飛鳥山へ
いよいよ江戸時代からの行楽地「飛鳥山」へ向かいます。王子駅を降りてすぐに見えるのがこの「あすかパークレール」。山頂までの高低差約18メートル、48メートルの距離をモノレールで結んでいます。
飛鳥山という観光地のしっかりとした乗り物にもかかわらず、このあすかパークレールはなんと無料!
冷暖房なども完備され、社内では飛鳥山の歴史についてもアナウンスされますので、ぜひ初訪問の際は乗車してください。また、無料とあって休日などはかなりの行列にもなるので、その心づもりでいましょう。
「晴天を衝け」渋沢栄一一色の飛鳥山博物館
あすかパークレールに乗って、飛鳥山を上がると、飛鳥山公園が広がります。江戸時代から続く歴史ある桜をはじめ様々な花が植えられ春になると彩り豊かになります。
また、奥には紙の博物館(今度は髪ではなく紙)、渋沢史料館、そして大河ドラマ「晴天を衝け」の主人公渋沢栄一一色になっている飛鳥山博物館があります。
年内中は渋沢✕北区晴天を衝けドラマ館として特別な展示がされています。おそらくドラマが終わるまでは混雑が予想されますので、ミーハーな方でなければ年末あたりに行くのがいいかもしれません。ちなみに入場料は800円になります。
こちらは入場無料の渋沢庭園
晴天を衝け大河ドラマ館の一方で、こちらの旧渋沢庭園は入場が無料になっています。渋沢栄一はここ飛鳥山に別荘を設けましたが、いずれはこの土地の魅力に惹かれて本宅として住みました。晩年を過ごした「曖依村荘」と呼ばれる邸宅跡になっています。
当時は敷地面積8,470坪!もの広さでしたが、戦災によってかなりが焼失してしまいました。
晩香盧
「ばんこうろ」と読むこの建物は、渋沢栄一の喜寿を祝って現在の清水建設が寄贈した洋風の建物です。1917年の竣工で、清水建設の名の下精細に作られた建物は内装外装ともに当時の最高峰ともいえたでしょう。
ランタン一つにも設計者の細やかな心遣いが見られます。
今は入ることができませんが、応接室なども予約をすれば入れるようになります。天井には船底状になっていて暖炉左右の漆貝を使った小窓など素晴らしい技術が詰まっています。これらの技術と歴史を踏まえ、国の重要文化財となっています。
青淵文庫
「せいえんぶんこ」と言われるこの建物は、渋沢栄一の80歳の祝いに財団によって寄贈されたものです。かつては論語などの漢文書籍などを蔵書していましたが、現在はそれらの図書も東京都立中央図書館に所蔵されています。
正面にあるステンドグラスは、渋沢家の家紋である「丸に違い柏」にちなんだ柏の葉や「寿」の文字、龍などがあしらわれたものになっています。
赤レンガ酒造工場
最後に向かったのは、赤レンガ酒造工場という場所。ここはかつて国による醸造技術の工場のために研究が行われた場所で、大蔵省によって建設されたものです。明治のさん大建築家妻木頼黄によって作られた赤レンガの建物はドイツのビール工場を模してつくられたとされています。
夕日に映える建物は平成26年には国の重要文化財として認められました。また、施設内は平日のみ予約をすることで観覧することができます。
併設する公園もかつては醸造所だった跡地を開発したもので、非常に賑わっていました。
子どもたちの賑わいを背に旅は、おわり。
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